興味深い競馬予想

ステージハンドとシーンシフターをまちがえなかった数少ないコメンテイターのひとりであるMは、しわがれ声で絶叫していた。 「シービスケットとステージハンドす!2頭がぐんぐん上がってきます!一騎討ちになった。
こちらに向かってきます!スージハンドの足が強まった……しかしシービスケットもあきらめません!なんという粘りでしこの時もまた、勝者は定かでなかった。 長い待ち時間と、ざわめく群衆、コースレコードを示す数字が点滅する掲示板、そしてふたたび、裁決委員のもとに滑っていく判定写真のやわらかな音。
写真はぼやけ、不鮮明だった。 スタンドのてっぺんで、MとPは抱きあって泣きくずれた。
しかしWは気を取り直して笑みを浮かべた。 「シービスケットは身体のすみずみまで使い、ありとあらゆる筋肉を駆使してがんばった」と彼はのちに語っている。

「おれはあの馬を誇りに思う」HとSは、ボックス席で身じろぎもしなかった。 自分と妻がもっとも勝利を切望してった。
自分はこのアナウンサー席で死んでしまうのではないか。 蒼白になったMが叫び声をあげる。
後ろにいた誰かが実況中継のMのことを思い出して、彼女の口をふさいだ。 下のボックス席では、Hが立ち上がったまま、ぴくりとも動かなかった。
双眼鏡は手から落ちていた。 馬群ははるか彼方に後退した。
ステージハンドとシービスケットはぴったり並んで走り、最後の400を24秒8で駆け抜けた。 長距離レースとしては、驚異的な記録である。
Nはステージハンドをシービスケットに思いきりぶつけてきたが、シービスケットは受けて立ち、頭を下げ、耳を寝かせて猛然と反撃した。 Wはシービスケットの背中に貼りつき、必死に馬を駆った。
ゴールが近づくと、馬たちの頭は不規則に上下し、先頭は1、2メートルごとに入れ代わった。 2頭は同時にゴールを越えた。
いるレースにまたもハナ差で敗れたことで、Hは18万2150ドルを取り逃し、シービスケットは史上最大の賞金獲得馬という称号を得られなかった。 Hはかすかな笑承を漏らした。

「なあに」と彼はいった。 「いつもいつも勝つってわけにはいかないさ」記者席も一様に沈んだ。
記者の多くは、シービスケットが史上最高の走りを見せたことを認めていた。 それなのにこの馬は、斤量システムの巡り合わせの悪さと別の馬の妨害によって敗れてしまったのだ。

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